ルカ・モドリッチのワールドカップ

２０１８年FIFAワールドカップの優勝が、
フランスに決定しましたね。

 

クロアチアは、東欧諸国として初めての優勝を
惜しくも逃しましたが、
司令塔としてチームを率いた
ルカ・モドリッチ選手（３２）に、
大会の最優秀選手（ＭＶＰ）を意味する
「ゴールデンボール賞」が授与されました。

 

けれど、トロフィーを手にした
モドリッチに笑顔はありませんでした。

 

 

人口４２０万人の小国クロアチアが、
準優勝を手にするというのは、
大変なことです。

ドイツのサッカー選手の数は、
クロアチアの全人口より多いと聞くと、
その大変さが分かると思います。

 

やっとの思いで決勝まで進んだのに、
様々な不運が続き、
惜しくも優勝を逃してしまいました。

 

クロアチア優位の流れができた時に、
突然ピッチに乱入者が現れ、
試合を中断させられたこともありました。

 

また、決勝戦での主審の判定も、
大きな論争を呼んでいます。

フランスの１点目と２点目の場面が、
納得いかないという人も少なくないようです。

スペイン『ラディオ・マルカ』で解説を務めた
スペイン人元審判アンドゥハル・オリビエ氏は、
フランスの１点目と２点目が無効であるとの
見解を示しています。

 

 

クロアチアの主将モドリッチは、
後半が始まる前に副審に詰め寄り
「PKじゃなかった……。ファウルじゃなかった……」と抗議。
けれど、もちろん判定は覆されませんでした。

 

 

また、フランス勢に比べると、
身体を回復させる時間も少なかったことなども、
不利な要因だったと言われます。

 

モドリッチはＦＩＦＡ公式インタビューに応じたとき、
「優勝トロフィーを掲げるために全てを出し尽くす。
自分のサッカー人生で獲得した全てのトロフィーと
引き換えてでも構わない」と強い決意を口にしたそうなので、
優勝を逃したことは、本当に悔しかったことでしょう。

 

とはいえ、１７２センチの身体を酷使しながら
戦ったモドリッチは、
世界で最もサッカーの上手い選手と
認められたわけです。

 

 

モドリッチは準決勝までの６試合で、
６０４分間プレーしており、
走行距離は約６３kmとなっています。

６３kmは、おおよそ新宿駅から成田空港までの
距離だそうです（※道のりではなく直線距離）。

 

もちろん、モドリッチは運動量だけでなく、
技術面でも世界を驚かせています。

 

W杯公式インスタグラムは、
モドリッチのスーパーミドルのシーンを公開し、
「なんてヒットなんだ！ もはや大会ベストゴール？」
とメッセージを添えるほど。

 

コメント欄には
「美しすぎるキャノン砲」
「アルゼンチンに静寂もたらす一撃」
「足を振り切るスピードはワールドクラス」
と賛辞が寄せられ、
再生回数１５０万回を超える反響を呼んでいます。

 

 

クロアチアは決勝トーナメントでの3試合で、
いずれも延長戦を戦っており、
３２歳のモドリッチに疲れがあるのは当然です。

それでも最後まで、
チームを引っ張ってゆこうとする姿に心を打たれ、
モドリッチのクロアチアに感情移入しながら、
試合を見ていました。

 

私がモドリッチに感情移入してしまうのは、
モドリッチの歩んできた人生にも
影響されていると思います。

 

 

旧ユーゴスラビアから分離独立を
宣言したクロアチアでは１９９１年、
クロアチア人と旧ユーゴで多数派だったセルビア人との間で、
紛争が勃発しました。

 

モドリッチの一家は、
クロアチア中部の街で暮らしていたそうですが、
実家は放火されて全焼し、
一家は南に約５０キロ離れた
アドリア海沿岸の都市ザダルに避難したそうです。

 

祖父は逃げる途中でセルビア軍に射殺され、
モドリッチはその場面にも遭遇したといいます。

 

６歳だったモドリッチは、
避難所となったホテルで数年間暮らし、
そこの駐車場で繰り返しサッカーの練習を
したそうです。

 

 

10歳の時にマリオ・グリゴロヴィッチとともに、
地元のサッカークラブ、ハイドゥク・スプリトの
トライアルを受けますが、
マリオは合格しましたが、
モドリッチは不合格となります。

 

ハイドゥクのスカウトは、
トップレベルのサッカー選手になるためには華奢で、
力がなさすぎると判断したのだそうです。

 

モドリッチは当時について、
「私と家族にとって非常に厳しい時期だった。
過去を引きずりたくはないが、忘れることはできない」
と語っています。

 

また決勝戦前日の記者会見でも紛争経験に触れ、
「人生で最も重要なことはあきらめないこと、
そして自分を信じることだ」と述べました。

 

モドリッチは、紛争がクロアチア国民や国家の強さを
作ったとも、強調したそうです。

 

 

そんなモドリッチの歩みを知ると、
モドリッチのどこか寂しそうな瞳の訳が、
分かったような気になってしまいます。

 

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